第一章

6/6
前へ
/143ページ
次へ
そこには一人の少女がいた。部屋を開ければそこには大きな窓から外を見る一人の老人。 カチッ 「暁か、年寄りの背を狙うとはなんと卑怯者よ。ホホッ」 「ふざけないで叔父上。何をお考えに?このようなことをしても無意味ではないのですか?」 それにしてもこの部屋に染み付く血の臭い…鼻が曲がりそうだ、わ…え、?手? 「あぁ、臭うのか血生臭いからのぅ。始末してからというものの、後始末を忘れていたよ」 この手は見覚えあるわ。私のあげた赤色の、ルビーの宝石が埋め込まれてるリング、世界にたったひとつしかない私がデザインしたものだもの。 ねぇ晋太郎…。 リングを、抜き取り自分の指えと滑らせる。瞳からは溢れる涙、そして憎しみへと刈られた瞳は一人の老人を映す。 「暁、お前も晋太郎のように死ぬとよかろう。儂のためにもだ!!」 叔父上の打つ銃の玉になど当たりはするものか。叔父上、貴方が教えてくださったのですよ、拳銃の扱い方を。だから貴方の放つ玉に掠りはしても当たらない。 たから、私のために、死んではくださらないかしら? ドンッ 「カハッ…」 「苦しい?楽になんて死なせない、死なせるものか。父上も母上も晋太郎も先生も有馬もっ!貴様のせいだっ!」 息絶えたものからはなにも聞こえては来なくて、ただただ私は無力だと痛感するばかり。 初めて人を殺めたことなどどうでもよかった。そして見つけてしまった。晋太郎の首を。銅から離れた首を見たとき悲痛に感じた、私は声にならない声を上げて晋太郎の首をこの胸に抱き締めた。この光景を見たら絶対に気持ち悪いと言うものも居るだろう。 「ごめんなさい、晋太郎。貴方は私の大切な人でした。恋をしてはいけない私達だったけれども、貴方は私の心の中に永遠に残り続けるわ」 これでこの家も、華月家もお仕舞いね。あ、れ、目が霞む、頭がボーッとしてくる。どうして?まだ、ダメよ。意識、がはなれてく。 ここで暁の意識は途切れることとなった。
/143ページ

最初のコメントを投稿しよう!

128人が本棚に入れています
本棚に追加