第三章

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吉田さんは去っていった。そして代わりに変な男が入ってきた。 「晋作!噂の女はどこだっ」 そういって襖を勢いよくあける男。 第一印象。あれ、誰かにか似てるわね。見たことあるよーな。だった。 「誰だよ。ここに晋作がいるって聞いたんだか、あんた知らないか?」 この男、話さなければ頭が良さそうに見えるのに。 なんだか残念におもえちゃうわね。 「晋作は、たし、「って、あんた誰だよ。こんなやつこの塾にいたか?」」 私の声に被って話し出す目の前の男を心底殴ってあげたいなんて思ったのは、心にしまっておこう。 「失礼な人ね。ここは私の部屋ですけれど?晋作なら雁にでもいってるのでは?」 と私が話すと目の前の男は呆然と見ていた。 「お、お、お、お、おんなぁぁぁ!?」 「今さらですか?私の今の格好からしっかりとした、男装もできてないのだからこの部屋に入ってきたときに普通は気付くはずなのだけれど、貴方はきっと馬鹿なのね」 そんなところにやっと現れた。 「朝から騒がしいなって、やっときたか。伊藤遅いぞ、ってなんつー顔してやがんだよ」 「いや、だって晋作。こいつ女」 片言の日本語を話す伊藤さんとやらが何だか面白く見えてきた。 「あ、あぁ伊藤は知らないんだったな。まぁなんだ、色々あってここに居候してる奴だ」 「まぁ、そういうことよ。伊藤さん」 「あれ、伊藤さんに晋作、なにしてるの?」 「九一か。伊藤にこいつのこと紹介してたところだよ」 晋作は廊下をあるいて此方に来ている人物に話しかけていた。 その男、第一印象。眠そう。 目を擦りながらの登場になんだか穏やかなひとって思ったの。
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