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「おい!何でそこで落とすんだよ、この下手くそ!」
結局。
鷹雄は俺の意見を聞き入れ、UFOキャッチャーをしている。
本当、押しに弱いな鷹雄クンよ。
面倒見が良いっつーか、何つーか。
この厳つい外面と違って、中身はそんなだから、ギャップ萌えする奴はいるだろう。
まぁ。
こいつに近付く事が出来てからの話、だけど。
どこまでもドライなくせに、どこまでも人情味に溢れている。
なんて。
そんな矛盾の塊は、俺の好奇心を度々刺激して来る。
「退けよ、この負け犬。王様の力を見せてやる。」
「てめぇな、俺より下手くそなくせに、取れんのかよ。」
苛立つ鷹雄を押し退け、俺は機械に百円玉を入れた。
ボタンを押し、自分の思う位置までクレーンを動かす。
よし。
横は、成功だ。
お次は、縦っと。
再びボタンを押し、自分の直感が働く所まで、クレーンを動かす。
「きた!うらぁ!」
大きな赤いボタンを押した途端、クレーンが下へ下がり始めた。
何かのテレビのキャラクター目掛けて、クレーンは真っ直ぐに下りて行く。
が。
「ぁあ!?」
クレーンの先は、スカッと空を切り、何の収穫もなく元の位置へ戻って行った。
「…………口だけ番長。」
ボソリと呟く鷹雄に、俺は思い切り腕を振りかぶる。
もちろん、本気で殴る為、だ。
「ぅ、お!?」
ブオッと空気が振動する音が響き、鷹雄がギリギリで避けた事を悟る。
「っぶねーな!」
「避けんじゃねーよ!」
大きな怒鳴り声が店内に響き、騒然とし始めた周りでは、
喧嘩が始まったと思った奴らが、恐怖や好奇心に色を染めて俺達を見ていた。
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