第3章

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チップを渡すと再び深々とお辞儀をして私たちは緑の屋根の家を後にした。 「これは杏里が持ってて」 渡されたのはマグリアさんという方の光話番号。 「え、でも・・・」 私は光話すらしたことがない。 かけ方も分からないのに私が持っていて意味があるのだろうか。 空間もまだうまく使えない私だと、身に着けて歩かなければならなくなる。 紙1枚だし大したことはないけど・・・。 「しばらくかけることはないと思うけど、かけるときがきたら杏里にかけてもらうから」 「分かった」 とりあえずはマグリアさんと勇者について語り明かすつもりはないらしい。 私はシダからもらったピアスと一緒にキュロットのポケットに紙をしまった。 「じゃあ私はこれでお暇いたしますわ」 「えっ」 メイの急な言葉に戸惑う。 なんとなくだけどこのまましばらくついてくるような気がしていたからだ。 「そうだね、その方が良いね」 コウはメイに右手を差し出した。 メイはその手をじっと見つめると両手を出してその手を包み込んだ。 「また会えますわよね」
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