第1章

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「ただいま」 「おかえり、杏里」 台所の方からお母さんの声がした。 「今日、練習だけど11秒台出たよ」 「あら!あらあら!よかったじゃない!1年ぶりの大記録ね!」 中3の時に一度出したが大会でこけてしまった私には「追い風が・・・」とか「まぐれで・・・」とかいろいろ言われてきた。 元々12秒台を連発していた私にはスポンサーがつくだの個人的にコーチをつけるだのいろいろ話が出ていた。 結局公式の場で記録を出せなかった私は挫折し、すべての話をなかったことにし、半年間は受験勉強という名目で逃げ続けていた。 「ご飯は食べてきたのよね?」 その挫折から救ってくれたのは 「うん、大輝と」 大輝・・・。
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