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お婆ちゃんがちゃんと手入れしてきたそれらを眺めながら、幸はこの鏡の話を思い出していた。
幸達の先祖は裕福で、この辺り一帯に土地を持っていたらしい。
けれど代々男の子が生まれず、婿を取り、この家で祝言をあげた。
昔から有るこの姿見で、白無垢に着替えて沢山の娘が結婚して行った。
お婆ちゃんも白無垢姿をこの鏡に写したそうだが、母は古いしきたりを嫌い、式場でドレスを来たそうだ。
この古い鏡は枠に凝った飾りが施されていて、きっと高価な物だっただろう。
幸は古い鏡を生前のお婆ちゃんの様に乾いた布で磨いてあげた。
お面や人形のホコリも払う。大好きなお婆ちゃんの匂いがまだ漂い、幸はコッソリ泣いた。
この部屋の九十九神はそれを見ていた。
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