第二章 二回目の出会い

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「洋楽か。これ歌ってる人すごい良い声してるね。なんて人?」 「…Lisa Loeb。」 「へー。私はてっきり英単語でも聞いてるのかと思ったよ。」 「え、英単語もあるさ。というかそろそろ離れろ。」 「あ、ごめんごめん。」 舌を出しておどける木村。 今更だが彼女の名前は木村萌子(きむらもえこ)。 同じ医大進学クラスに所属する女の子だ。 もちろん同級生。彼女は…とにかくかわいい。 うん。噂されているのを何度も聞いたことがある。 高校一年の予備校に入りたての時、俺が消しゴムをなくしてしまって焦っているときに、その時たまたま隣に座っていた彼女がどうぞ、と笑顔で貸してくれてからの仲だ。それからちょこちょこ話すようになって三年経っている。 休み時間の度に話しかけてくる彼女は俺と同じように他に友達はいないようだ。だから唯一の知り合いである俺にちょっかいをかけてくるのだろう。 しかし彼女、落ち着きがないかと思えば、授業中は常に集中して真面目だ。明るくて綺麗。しかし彼女は『太陽』とは違う。 どこか僕と同じような影を感じるんだ。恐らく気のせいではないだろう。 そういうのを見ぬく力には自信がある。
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