第二章 二回目の出会い

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とかいって、僕が彼女のことについて知っていることはあまりない。 都内でも有名な私立の女子高、お嬢様が通うと呼ばれている百合根女学院に行っているということくらいだ。 それ以外のことはなにも知らない。聞かれるのは専ら俺のほうだ。 出会って最初の頃に遠慮なく、「葛城くんってもしかして東柏葛城病院の御曹司?」と聞いてきたときには驚いた。 ここまでナチュラルに俺の身の上を聞いてきた人は初めてだった。 ここまで色々と書き並べてきたが、なにを言いたいかというと、 彼女、木村萌子は僕の、 “初恋の人”であるということだ。 ◆◆◆◆◆ 予備校が終わって外に出る。 「あ…そういえば台風か。」 外は大雨。幸い風はそこまで強くない。 しかし排水溝に水が流れきっていなくて道路に溢れている。 周りで騒いでいるやつらの話だと大雨洪水暴風警報が発令されているらしい。 三つも。珍しい。 玄関口には迎えの車を待つ人たちでごったがえしている。 「うわー。すごい雨だね。御曹司はどうするの?やっぱり迎え待ち?」 「…ああ。そうするかな。」 自転車は置いていこう。とりあえず誰か呼んで迎えにきてもらうかな。 スマホを取り出して電話帳を見る。
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