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「わたし傘折り畳みしか持ってきてないよー。うっかり。」
「あ…俺傘ないや。」
俺としたことが…。傘を持ってくるのを忘れた。
今日に限って。
まあいい。迎えに来てもらえば良いのだ。
自転車は置いて行こう。
みんなそうするみたいだし。
電話帳を操作して誰を呼ぼうか考えていると、しばらく黙っていた木村が突然口を開いた。
「…雨すごいね。」
「ああそうだな。」
「相合傘してあげようか?」
にやにやした顔で俺の顔をのぞき見る木村。
「やめろ。からかうな。」
顔を逸らす。赤くなっているのバレてないかな。
彼女はひとしきり俺で楽しんだあと、しばらくしてまた口を開く。
「…あのさ、御曹司はさ。やっぱり家の病院を継ぐの?」
その言葉に俺の指の動きが止まる。
「…なんで?」
「いやちょっと気になっただけ。家が大病院やってたらさ、将来安定だから良いよね。」
「…は?なにが言いたいの?」
やばい。カチンときてしまった。怒るな。怒るな。
冷静になれ。相手は普通に話しているだけだ。
落ち着け俺。
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