第二章 二回目の出会い

11/26
前へ
/88ページ
次へ
「わたし傘折り畳みしか持ってきてないよー。うっかり。」 「あ…俺傘ないや。」 俺としたことが…。傘を持ってくるのを忘れた。 今日に限って。 まあいい。迎えに来てもらえば良いのだ。 自転車は置いて行こう。 みんなそうするみたいだし。 電話帳を操作して誰を呼ぼうか考えていると、しばらく黙っていた木村が突然口を開いた。 「…雨すごいね。」 「ああそうだな。」 「相合傘してあげようか?」 にやにやした顔で俺の顔をのぞき見る木村。 「やめろ。からかうな。」 顔を逸らす。赤くなっているのバレてないかな。 彼女はひとしきり俺で楽しんだあと、しばらくしてまた口を開く。 「…あのさ、御曹司はさ。やっぱり家の病院を継ぐの?」 その言葉に俺の指の動きが止まる。 「…なんで?」 「いやちょっと気になっただけ。家が大病院やってたらさ、将来安定だから良いよね。」 「…は?なにが言いたいの?」 やばい。カチンときてしまった。怒るな。怒るな。 冷静になれ。相手は普通に話しているだけだ。 落ち着け俺。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加