第四章 難題

21/29
前へ
/88ページ
次へ
◆◆◆ そして時は過ぎ、放課後。 俺は夢を見ているのだろうか。 まさかまだ布団の中なのか。それとも授業中に居眠りしてしまったのか。 頬をつねる。痛い。現実だ。 「おいおい、まじかよ。」 今日から練習に使う空き教室。ここに集まったのは、三人。 俺と堤。あと初対面の女子生徒が二人。 おかしい。名簿にはもっと名前が載っていたはずだ。 「ほかのやつらはどうしたんだ。」 俺のつぶやきに堤が反応する。 「いやーなんかみんな部活とか用事で忙しいらしくて、今日は休むって。仕方ないよね。」 それって、今後も来ないパターンじゃないか、という言葉が危うく口から出かかった。 考えてみれば当然の結果なのかもしれない。堤の人気で引っ張ってきた部員たちだ。いや、同好会だから会員か。 元々彼女たちは『よさこい』をやりたくて集まっていない。堤目当てで集まっている。 だからこそ、最初は堤を目当てでもよいから活動してもらって、その活動の中でよさこいの魅力を知って、残ってもらうという俺が勝手に考えていた作戦だったのだが。現実はそんなに甘くなかったか。 「よし、切り替えていこう。今日はよさこい部、初めての活動だよ。がんばっていこうね。えいえいおー!」 おー!と女子生徒Aが手をあげる。もうひとりの女子生徒BはさきほどからAにくっついていて離れない。Aに続いて、遠慮がちに手をあげた。 もちろん俺は挙げなかった。だって恥ずかしいじゃん。 「じゃあ、まずは自己紹介しようか。時計回りに、まずは信也から。」 いま俺たちは空き教室でまばらに座っている。黒板の前に翔真が立ち、黒板に向かって右前に俺。そして左の少し後ろにB、その前の席にAが座っている状態だ。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加