第四章 難題

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「よかったー!ふたりともありがとう。僕はとてもうれしいよ。」 堤も俺と同じように緊張していたのだろう。 先ほどまで真剣な顔をしていたが、いまは嘘のように、弾けるような明るい笑顔を浮かべている。 堤はよし、と言って手のひらを合わせ、パシッと音を立てる。 「じゃあ、さっそく練習をはじめようか。まずは場所づくりをしよう。みんな机と椅子を後ろに下げてもらっていいいかな。」 全員で机と椅子を下げて、練習の準備完了。 俺は机と椅子を下げ終えたあと、黒板の左側に設置してあるスクリーンを真ん中まで引き出すために、前にいく。 「あ、信也先輩、私やりますよ。」 有栖川さんがいつの間にか横にきて、気遣ってくれた。 「じゃあ、お願いしようかな。」 後輩として動いてくれたのだろう。せっかくの厚意を無駄にするのもあれなので、お願いしてしまった。 ちなみに突然、信也先輩と呼ばれ、すこし驚いてしまったのだが、別に悪い気もしなかったので、そこにはなにも触れなかった。おそらく堤が俺のことを名前で呼んでいるので、そのまま言ったのだろう。 正直にいうと、後輩というものができたことがなかったので、素直にうれしくもあった。 「そういえば、小野塚先生おそいなあ。今日は来てくれるはずなんだけど。」 堤が携帯で時間を確かめる。 彼の内心としては、最初の活動なので挨拶をしてほしかったのだろう。 「あ、小野塚先生なら会議ですこし遅くなるっていってましたよ。」 有栖川さんがスクリーンを貼りながら、顔だけ堤に向けてそう答えた。彼女やけに詳しいな。 そう思っていたら、つい表情に出てしまったのか、今度は僕のほうを向き、言葉を続ける。 「私とあやは小野塚先生が担任なんです。」 なるほど。納得。
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