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年末モードにいよいよ突入するっていう直前に、運よく一緒の休みが取れたから。
前の日からお泊りして。いつも通りのんびりニノのお家でパジャマデートしてる。
毎週チェックしてる経済誌を捲ってたら、離婚と経済の関係について特集してた。
『ガガガガガ…ッ』
何故か俺の視界の向こうでマシンガンのような銃声が聞こえてくる。
最近は離婚の原因の第一位が『性格の不一致だ』ってのは有名過ぎる話だけど。
そもそも他人なんだから、性格一致しすぎる方が気持悪くないか?
育った環境が違うなら、価値観だって違うはず。
それに折り合いをつけたから一緒になってるんだよね?
ズバっ、って。今度は刃物で何か切り裂いたような効果音が聞こえた後で。
『――ギャァァァ!!』
俺の読んでる記事の内容も殺伐としてるけど。
この世のモノとも思えない悲鳴がまた聞こえて。
やっと俺は雑誌から顔を上げた。
大画面の液晶テレビの前。
フローリングの上にちょっと猫背で胡坐をかいて。
もの凄い速さで動くまあるい指先が操るコントローラーを握り締めて、画面の中の主人公に大量殺戮を繰り広げさせてる二ノが居た。
敵が命を絶つ時の断末魔の悲鳴が、
『ギャァアア…』
暗い画面からまた流れてくる。
モンスターからの攻撃を受けて少しでも主人公のステータスが減ろうものなら、イラつくような二ノの舌打ちが重なる。
ホント。教育上よろしくないゲームだ。
「二ノぉ」
「なあに颯ちゃん」
「――ソレ。止めようよ」
「もうちょっとで記録更新だから。2万体撃破…」
獣型、人型、虫型してるのに、兎に角普通じゃ目にしない形のおっかない奴等を、次々に消していくのが楽しいらしいけど。
俺にはよくわかりません。
コレも性格の不一致?
「もぉ…。そんな恐ろしいコトする子に、育てた覚えはありませんよ」
「颯ちゃんに育てられた覚えもありません」
俺との会話も続けながら、食い入るように画面を見つめて指先で主人公を意のままに操る二ノ。
「いやった!!記録更新~!!」
って。何の役にも立たないことで喜んでるなあ。
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