落胤

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(奴らは皆わしより劣る。前代のやり方に固執している。新しい発想のない者どもに、新しいものを押し付けては、かえって反発を招く) 直義を古いと言う師直を無視し、基本的に鎌倉幕府のやり方を踏襲した。 しかし、めまぐるしく変わる時代に。その鎌倉風に溢れる者も多数いたのである。それらの対応も必要になる。それは師直の担当だ。 だが、両者の争いは単なる権力争いにとどまらなくなる。戦にでもなったら、新幕府は分裂する。 困るのは尊氏で、だから、彼は終始中立的な立場で、両者の間でおろおろしていた。 それが変わったのは、直冬が現れてからだ。尊氏は己の直系に固執するようになった。 尊氏とその孫子への権力の移行を確実にするため、傍流でも将軍の座を狙える者――つまり、直義と直冬にそれが奪われないようにと、直義に対立する師直に肩入れし、師直を支援するようになったのだ。 それも表立ってのことではなかった。表向きは中立的に見えた。 いや、相変わらず、師直と直義の意見を聞くうちに、右に左にと揺れただけなのかもしれない。結果的に自分の孫子に都合よく全権が引き継がれただけなのかもしれない。
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