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間接照明の落ち着いた店内は、時間が早いせいか客も少なく静かだった。
わたしは仕事を切り上げ、テーブル席で待っていた。
ショットバーでの会う約束をしたのはわたしからだった。前回のデートで来た店だから、カレには場所はわかるはず。平日の急な誘いだったが、応じてくれた。もっとも、残業を終えてやってくるので、少し待たなければならないが、それは承知していた。
ゆっくりと溶けていくロックの氷に映るひかえめな照明を見つめながら、カレを待つ。カウンターの向こう側では、蝶ネクタイをむすんだ年配のバーテンダーがシェイカーを振っていた。
グラスに口もつけず、スマホもいじらずに待っていると、ばたばたと店内へと入ってくるスーツ姿の男が店内の空気を乱した。ぐるりと見回してわたしを見つけるとやって来た。
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