ショットバー

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 テーブルの向かい側へすわった。  30歳をすぎて結婚歴はなし。それはしかしお互い様である。  つきあい始めたのは1年ほど前だった。カレが〝その話〟をふってきたことはあったが、複雑な気持ちがあっていい返事をしていなかった。 「遅くなってすまない。なんとか仕事を片付けてきたよ」  と、ネクタイの結び目をゆるめる。 「いいのよ。急に呼び出したんだし」 「で……、話は?」 「その前に、なにか注文しない?」 「ああ、そうか……」  カレは手をあげ、ウェイターを呼ぶ。  少しずつ増えてきた客に対応するため店内を俯瞰していた若いウェイターがすぐにやってきて、注文を取った。  水割りをオーダーした。 「仕事、忙しかったんじゃない?」 「いや……いつもと同じで、とりわけ忙しいわけじゃない」
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