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わたしと違い、カレは商社に勤める将来有望な正規のホワイトカラーである。
わたしはというと、冴えない人材派遣のスタッフだった。あちこちへ派遣されて、いろんな仕事を請け負う、いわゆる「なんでも屋」である。派遣期間もさまざまで数ヶ月から、短いのだと1日というのもある。
生活にゆとりがあるカレと比べて、日々不安のぬぐえないわたし――。
「話ってほどじゃないの。ちょっと話がしたかったから」
「いやなことでもあった?」
カレは優しい。わたしのことをよく気遣ってくれる。
「まぁね……」
わたしはやっとグラスに口をつけた。氷が半分ほどの大きさになっていた。
水割りが運ばれてきた。氷をトングではさみ、慣れた手つきでグラスに放り込むと、ミネラルウォーターを注いだ。
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