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当たり障りのない会話をつづけて、ふいに、話題がとぎれたときに、わたしは本題に入った。
「リミットカードって知ってる?」
「都市伝説だろ? きいたことはあるけど」
カレは胡散臭げな表情をした。
「本当にあると思う?」
「まさか。どこからともなくお金がやってくるなんて話、あるわけがない」
「わたし、父が早くに亡くなってるって、以前(まえ)に話したでしょ?」
「たしか中学生のころだったとか……」
「わたしにはよくわからない難しい病気で、医者からは助からないと言われてたの」
カレは少し水割りを口に含む。わたしがなにを言おうとしているのかを一生懸命考えているのがわかった。
「あるとき、父は急に態度が変わったの。仕事人間だったのに、わたしたち家族といっしょにいることが多くなった。体力が許す限り、旅行へも出かけた。そのときわたしは、残り短い生涯を家族とともにできるだけ過ごしたいからだと思ってた。会社を辞めて、治療費もかかるのに、家族のためにお金を使って大丈夫なのかなんて、考えもしなかった。でも、からくりがあったのね……。それがリミットカードだったの」
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