第1章

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横で久藤が息を飲むのが分かる。 その緊張はジワジワと彼を蝕み、隣にいる私の方までビシビシと伝わってきた。 悠然と現れた彼女は綺麗な長い茶髪を耳にかけて少し照れながら笑った。ぱっちりとつぶらな瞳、長いまつ毛に健康的で強気な眉、高くはなくても、小作りで可愛らしい鼻、ぽったりした唇は口角によって、可愛くも艶っぽくも演出できる。 今は白のふんわり膝丈のスカートと、緩めシフォンのノースリーブを着こなし、革紐で留めたラフなサンダルをつっかけている。清純そのものを体現した姿だった。 シフォンのカラーもパステル調のピンクで、時にモデルそのものをパッとしない無個性に変身させてしまう恐ろしい色であるが、彼女をもってすれば多いに魅力を増幅させる本来の引き立て役に徹する。 ほうけた久藤をそのままにその変幻自在な女性は私に視線を移し、微笑んだ。 万人にモテるタイプだ。 男じゃなくともオチる。 「涼介くん、久しぶり」 「あ、あぁ。翠、久しぶり」 翠と呼ばれた彼女はそれでもこの再会が偶然でない事を知っている。 玉の汗を首すじに浮かせながら、わざわざ久藤に会いに来たんだ。 対して、久藤の方は完全に不意打ちだった。
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