第5章

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彼女と関係を持つようになって一か月、課長の話をすることはなかった。彼女はわからないが、俺は課長の話を避けていた。 少しでも早く彼女に立ち直って欲しかったから。 最近の彼女は以前のように取り乱して泣いたりしていない。それは、きっと彼女が課長のことを吹っ切れつつあるから。俺はそう解釈していた。 「あー、やっぱり混んでるな、電車の方が良かったかな」 新宿に向かう途中、案の定渋滞にはまりポツリと愚痴をこぼすと彼女は言った。 「今日は電車は無理。帰り荷物が多くて電車じゃキツイもん」 「なるほどね、だから俺をアッシー君に呼んだわけだ」 「そんなんじゃないけど……、うーんでも正直言うとそうかも、ふふ」 手鏡で自分チェックをする彼女の唇から笑いが漏れる。
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