第2章

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横断歩道を渡った先には小さな公園があって、そこに植わった桜の木は毎年綺麗な花を咲かす。 そして新学期となる今日に相応しく、満開に咲き乱れる桜の木の下には 一人の男子高校生が立っていた。 こちらに背を向けているため、表情は読めない。 だけど。 まるで愛おしいものに手を伸ばすかのように そいつは桜の花に触れる。 一面が桃色に染まる中で その黒い髪の色が なんだか不釣り合いに見えて。 でも桜に手を伸ばす仕草が、桜と溶け合っているかのように見えて。 そいつはゆっくりと上を見上げたようだった。 桜全体を見回し、軽く頷く。 なんでだろう、表情は見えないのに。 そいつが笑っているんだろなって感じた。
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