腹黒王子とドM姫

6/8
前へ
/9ページ
次へ
情けなく尻餅を付いたままの私を覗き込むみたいに、ちょっと屈みながら迫ってくる城戸に思わず唇を腕で隠した。 「へぇ、つまみ食いくらいしてそうなのに。本当に初めてでした?」 「そ、そもそも私はそういう趣味は無いんだよっ!」 偶々身長が高くて、運動が出来て、断れない性格が。 格好良くて、力持ちで頼れる優しい王子様に擦り変わって。 自分の居場所を守る為に、そんな偶像通りの自分を演じるしか無かっただけ。 「嘘吐き」 城戸の声に心臓が跳ねる。 胸の内を見透かされたみたいな一言に。 「本当に嫌なら、演じたりなんかしないわ。あくまでフリ、それを楽しんでる自分が居なかったって――言える?」 城戸の身体が腿の上に落ちてきて。思った以上に軽いのに、身動きが取れない気がする。 「ねぇ、せんぱい。内緒にしてあげるから、私の前では素直になって良いよ?」 腕が身体に絡み付く、声が耳に纏わり付く。 耳元で囁かれる甘い誘惑に力が抜けそうになる。 こんな感覚――知らない。 気付いた時には、私は床に組み敷かれて。 お腹の辺りに股がる彩葉が、にっこりと可憐に唇を歪ませながら。 「茜先輩、今日から先輩はいろはのモノです。良いですね?」 頷く間も無く、覆い被さるみたいにさてされたキスに。 抵抗すら出来ず、身体を委ねて、甘い声を漏らしていた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加