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翌日――
「あ、茜ーっ!昨日結局来なかったじゃん!どうなったの?」
通学路での出会い頭に聞かれて思わず言葉に詰まる、だけど今更誤魔化す事も出来ないだろう。
「お友達ですか?茜先輩っ」
「きゃー!ちっちゃくて可愛いっ!あれ?もしかして、もしかして?」
反対側からおどおどとした風を装って顔を覗かせたいろはに、グループの子が黄色い声を上げてから。
私の顔をニヤニヤとしながら覗き込んで来る。
「まぁ、そういう事だから」
「ついに王子陥落かぁ、これは見物だねっ!」
他人事だと思って楽しそうに……、でも妙な目で見られないのは有り難い。
ふと、袖を引かれる感覚に気付いて彩葉に視線を落とすと。耳を貸せとジェスチャーで伝えてくる。
「最悪何か言って来る輩は私が排除しますので、遠慮無く王子ぶっていて下さい。貴方の弱い所なんて、私以外に見せたら承知しませんからね?」
ちょっと屈んで寄せた耳に彩葉の手が添えられて、こっそりと告げられる。
言い方こそ悪いけど、ちょっと妬いてくれたのと。遠回しに守ってやるって言われたみたいで、嬉しくなる。
なんて単純なんだ私。
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