5.陽太の誤算

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近未来に似せたセットの中、彼女と2人立っていた。 俺たちの前には人の群れ、後ろも同じ、その集団が皆この時ばかりとディズニーランドを楽しんでいる。 比べて2人はさっきから一言も会話をしていない。 俺の隣にいるのは彼女、八木愛花梨ちゃん。 今もさっきも澄ました顔でボーッと宙を眺めている。 その顔に、いつもの、あの口の両端をキュッと上げた笑みはない。 今朝、ディズニーランド入り口で会った時からずっとこんな調子だ。 アトラクションに乗るまでの40分足らずの待ち時間を持て余した様子で、彼女はフーッと溜め息ついて銀ピカに塗られた柵にもたれ掛かる。 足を曲げると真っ赤なワンピースの中からその白い太ももが露わになる。 足元は茶系のロングブーツ。 半袖のワンピースからはフリルのついた白いシャツが出ていた。 頭には服と同じ赤のベレー帽。 長い髪をピンで止め剥き出しになった耳には右に三連、左に1つのピアス。
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