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古びたラブホテルの天井をずっと見ていた。
圧迫感を胸に感じて。
いつ終わるか分からないリズミカルな振動に頭を揺られて。
ああ、もうこれで何度目だろうこんな気分。
彼は逆に、ベットの上仰向けになった私の首元辺りを、ずっと見ていた。
澱んだ、それでいてうっとりと半開きになった目で。
それでまるで一票を強請る選挙カーみたいに同じ言葉を繰り返す。
「好きだ。
アカリ、好きだよ。
好きだ」
私は、こういう時って苦しい振りをするに限ると思う。
実際重いし、体を揺すられて息苦しい。
はっはっはっとリズムに合わせて呼吸を乱すと、何も言わないでいいから楽。
思ったより早く事が済み、黒木は100メートルをダッシュしたみたいな顔で私の首に腕を回して抱き付いてくる。
私は思わず口走る。
「ねえ、貴方の下に在るのって、物?人?」
、
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