63人が本棚に入れています
本棚に追加
黒木という名の男は八木愛花梨の言葉が聞き取れなかった様子で逆に尋ねた。
「えっ。
何?」
比較的安価な古びたラブホテル、ピンクのベッドの上、白く輝くような裸体を晒した愛花梨は、ポンっと対象的に日に焼けた彼の黒い背中を1度叩くと話をはぐらかす様に別の質問をする。
「ねえ。
私が初めて?」
彼女にとってそれは答えの分かり切った質問なのだが黒木は大袈裟に動揺して目を泳がせると逆に尋ねる。
「あんまり気持ち良くなかった?」
フーッと愛花梨は息を吐く。
それは面倒臭い、下らないと感じた時にする彼女の癖だった。
そして微笑む。
所謂猫の様な口元で。
彼女の口の両端は普段から少し上を向いているのだが、微笑むとほぼ90度直角にキュッと上を向く。
「そういうのは分からないけど、初めてが私かどうかは気になる」
黒木は恥ずかしいのか顔を隠す様に彼女の露わになった乳房に付けて答える。
最初のコメントを投稿しよう!