11.理佳の家族 

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だから……その夢を叶える時、 俺は理佳にとって何があっても、反応出来るようにちゃんとした 知識を身につけたいんだ。 親父みたいに医者じゃないから出来ることなん少ない。 だけどただ救急車を呼ぶにしても119番をして狼狽えるよりは、 ちゃんと取り乱さずにアイツの現状を話せる知識が欲しい。   「託実……今の託実が理佳ちゃんの患ってる病気のことを詳しく知ることが  託実にとっていいことなのか、悪いことなのか私には判断が出来ないよ。  私より宗成叔父さんの方が専門だよ。  託実が何を思って、理佳ちゃんの病気のことを知りたいのか説明したうえで  叔父さんに教えて貰うといいよ」 裕真兄さんは、そう言って それ以上は、その話題に触れようとはしなかった。 「なぁ、集中治療室まで入れなくてもいんだ。  アイツがいる部屋の近くまでいってもいいか?」 「わかった。  その場所まで託実を送り届けて、  自分の用事に戻るよ」 そう言った裕真兄さんは、ソファーから立ち上がると その場所までエレベーターを使って、案内してくれた。 家族専用の控室と、集中治療室と記入された扉。 控室からガウンを身に着けた人たちが、 足をセンサーの上に翳して、扉を開けながら奥の部屋へと入っていく。 ただ開いては閉じていくその扉を、 俺は無言で見つけていた。 この扉の向こうで、理佳は今も病気と闘ってる……。
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