12.女心と初めての贈り物 

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バレンタイン。 告白する日。 だけど……ハートマークも、好きって言葉も 今の私にはかけそうになかった。 意を決して、ようやくチョコレートに書き始めた文字は カタカナで、【ゴメンネ】。 長方形のチョコレートを横置きにして、 立幅の半分以上にもなるむスペースに、よれよれと書き込んだ文字。 「って、理佳。  もうぅー、本当にバレンタインの意味わかってる?  ゴメンネって何よ、ゴメンネって」 何時の間にか戻ってきた堂崎さんは、 私の綴った文字を見て、イライラするように言葉を続けた。 「じゃ、もう一言付け加える」 そう言って再び、神経を集中させて書く文字。 アリガトウ。 そうやって書きたかったのに、配置を見誤った私の文字は アリガトの4文字までしか入らず、 ゴメンナサイにスペースを取りすぎた為、 チョコレートの右隅に、小さく読めるか読めないかのヨレヨレ具合で綴られた【アリガト】が精一杯だった。 大きなため息の後、 左下には、さっき作った、歪な葉っぱが堂崎さんによってあしらわれて、 メッセージの入ったチョコレートに接続される。 そうやって作られたチョコレートは、綺麗に箱へと詰められて可愛らしくラッピングされた。 堂崎さんが帰った後、携帯電話でお母さんにメールを送る。 * お母さんへ 急なお願いだけど聞いてください。 1月が託実の誕生日だったの。  マフラーと、毛糸か刺繍糸それと針を持ってきてください。 理佳 *
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