13.卒業式とアイツの願い 

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卒業式を終えて、クラスの奴らと別れると そのまま理佳の病院へと駆けつけた。 相変わらず理佳は、会おうとしてくれなかったけど 俺はその日だけは、どうしても一緒に過ごしたかったんだ。 俺にとっては、中学の卒業の日で……ホワイトデー。 俺がアイツの為に用意したのは、レッスンバッグと呼ばれるもの。 アイツがもう一度ピアノを演奏できるようになったら、 楽譜とかノーパソを持ち運びしやすいように、 姫龍伯母さんに教えて貰いながら簡単な鞄を作った。 縫い目がガタガタなのは愛嬌だ・愛嬌。 アイツの、よれよれのチョコ文字といい勝負だけどな。 食べ物の制限が沢山あるアイツには、 そう言うものよりも、ストレス負担がないものの方がいいと思ったから。 それを紙袋に入れて、病室を訪ねてた。 「理佳居るのか?」 ドアをノックして声をかける。 「託実……ダメ、ドアは開けないで」 すぐにいつもと同じ決まり文句。 「もう耳タコ。  ドアは開けないから、そこで話聞いて。  俺、今日……中学卒業してきた。  来月からは、高校生。  ちゃんと……医者になるから……。  親父みたいに、理佳助けられるようになるから」 そう言いながら、耳を澄まして理佳の声を待つ。 何やってんだろう。 ドアなんて、簡単に横に引けば開くのに 俺はこうやってでしか、アイツと会話できない。 アイツと俺を遮るドアにもたれかかりながら、 声をかけ続ける俺。 外から見たら凄く滑稽だと思う。 だけど……今はそれしか、俺に選べる術はないから。
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