13.卒業式とアイツの願い 

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理佳の返事を待っても、アイツの言葉は戻ってこなかった。 諦めて……更に言葉を続けることにした。 「理佳……今日、ホワイトデー。  ドアのところに、ホワイトデーのプレゼント置いとくから  後で見て」 そう言いながら、プレゼントを詰め込んできた持ち手の紐を ドアの持ち手に結び付けようとした時、理佳の言葉が続いた。 「待って……。  託実、ドア……開けていいよ」 そうやって伝えられた、天岩戸が開いた瞬間。 プレゼントを手にして、 久しぶりに理佳の眠るベッドへと近づいた。 「よっ、これ。  ホワイトテー」 アイツのベッドテーブルには、今も五線譜が散らばっていて シャーペンが一つ転がってた。 久しぶりに対面したアイツは、 11月のあの時みたいに顔が黄色くて……、 今回はパンパンに体が張っているような印象があった。 「びっくりしたでしょ……。  肝臓の調子が悪くて、顔とか黄色くなってるし  腎臓もうまく動いてくれなくて、体中が浮腫んでるの。  だから……会いたくなかった……。  会いたかったけど……会いたくなかったの……」 理佳はそうやって言葉を続けた。 そんな理佳の近くに行って、 俺は久しぶりにアイツを布団越しに抱きしめた。 前より弱っちくなったように感じる華奢な体。
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