13.卒業式とアイツの願い 

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「って今頃かよ。  理佳、気が付くの遅いんだよ。  お前が渡したプレゼントくらい、とっとと気が付けよ」 そうやって言い返すのは、照れくささを隠したいから。 本当は……貰って嬉しかったから、 肌身離さず使い続けたかった。 「使ってくれて有難う」 「あぁ。  ちゃんとあったかいぞ」 「うん……」 理佳はもう一度、嬉しそうに俺を見て笑いかけた。 「なぁ、お前の誕生日は?」 ちょうどいいきっかけが出来たような気がして、すかさず問いかけてみる。 「四月一日」 「四月一日って、後二週間くらいってことか……。  そっか……来月、誕生日か……」 「何か欲しいものとかあるか?」 プレゼント調査をするように続けて問いかける。 「海……」 「海?」 「そう……海に行ってみたい……。  でも、それは叶わないのを知ってるから」 そんな風に言葉を続けて、理佳は口を噤【つぐ】んだ。 その後、左近さんが理佳を迎えに来て アイツは何かの治療の為に、車椅子で病室を後にした。 連れられていく後ろ姿を見送って、 俺は病室を後にした。
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