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助手席から時折、後ろを振り返ると
肩から鞄をぶら下げた理佳は、嬉しそうに車窓から眺める景色を楽しんでるみたいだった。
理佳の隣には親父が居て、その後ろには理佳の両親が座ってる。
途中高速道路で、理佳のお父さんが運手を代わり
母さんが助手席。
俺は後ろの席へと移動することが出来て、
久しぶりに理佳とのゆっくりした時間を得ることが出来た。
車の中で、嬉しそうに微笑む理佳を見ながら
俺たちは他愛のない会話をする。
昨日の俺のLIVEの話、学校の話。
そんな話を聴きながら、
理佳は嬉しそうに笑い返してくれた。
「託実、ベースは?」
「相棒は持ってきてる。
アンプとかはないけどな」
「うん。
それでもいい。今練習してる曲、後で聴かせて。
託実の演奏聴くの久しぶりだから」
そう言いながら理佳は、また笑った。
病院を出て1時間ほど車を走らせた頃、
車窓から、真っ青な海が広がっていく。
そんな海を見ながら、また嬉しそうにはしゃぐ理佳に
親父が「理佳ちゃん、少し落ち着こう。体に負担がかかるから」そんな風に
窘める【たしなめる】ほど……。
親父に窘められて、両肩をキュっと持ち上げると
怒られちゃったって言う様に、また笑った。
何もかもが今のアイツにとっては新鮮で、
楽しいのだと伝わった。
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