16.想いを抱いて

2/3
前へ
/167ページ
次へ
GW。 託実や宗成先生たちが、 海を見に旅行に連れていってくれた。 凄く凄く嬉しかった。 この一瞬一瞬を、自分の中に刻み続けたくて 必死だった。 少しずつ弱っていく私自身の体がわかるから……。 ねぇ、元弥くん……。 元弥君も……命の終わりが近づき始めたと 思えた瞬間ってありましたか? 誰にも言葉に出来ない。 だけど……私の中では、そんな時間が近づいていることを 本能で感じ取っていたのかもしれない。 その後は、朝から晩まで時間が許す限り 五線譜の中に私の想いを閉じ込めつづけた。 夜想曲~ノクターン~ そう綴ったタイトルのには、 明け方の意味が込められてる。 ショパンの夜想曲は、当時社会界に足を踏み入れていたショパンの気持ちが綴られてる。 夜通し飲んで、騒いで恋を語り合って、 楽しい時間を過ごして会場を後にすると、 空が白々と明けかかってる。 『あぁ、今日の夜も楽しかった。  でも、夜が明けると空しいものだ……』 そんな風に夜を想う詩【うた】。 それが夜想曲~ノクターン~。
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加