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「託実くん、それに託実くんのお友達も
今日は理佳の為に有難う」
そう言って切り出した後、
アイツの両親は、俺に紙袋を手渡した。
斎場の椅子に腰掛けて、
紙袋の中身をゆっくりと確認する。
その中から姿を見せたのは、
アイツがずっと書き続けてきた、五線譜。
その五線譜には、俺には今も理解できそうにない
おたまじゃくしが泳いでた。
「託実、これは?」
「理佳がずっと病室で書いてた楽譜」
「ねぇ、託実。
ちょっと待って。
この楽譜、裏になんか書いてない?」
ペラペラっとめくっていた俺に、
美加がそう言って言葉を止めた。
*
託実へ
この楽譜が貴方に届いた時、
私はもう託実の傍に居ることが
出来なくってると思います。
託実、今まで有難う。
託実と過ごした時間は、
私にとっては、
夜明けのひと時のようで凄く優しい時間でした。
そんな託実との時間を
この夜想曲に織り込んで……。
君に奏でる夜想曲
世界でたった一人。
私が恋をした最愛の貴方へ
理佳
*
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