3.相棒探しと負けず嫌い

5/9
前へ
/167ページ
次へ
18時頃になって、私服に着替えた親父が病室に訪れた。 「託実、遅くなってすまない。  理佳ちゃん、託実を有難う」 そう言って俺を連れ出すように親父が動き出す。 黙々と作業を続ける理佳に声だけかけて 俺は親父と共に病室を後にした。 病院の関係者入口に近いところに停められている親父の車。 促されるままに車に乗り込むと、 車の中から親父は何処かに電話をかけ始めた。 「さっ、託実の相棒探しに出掛けるか?  母さんには連絡済み。ついでに、隆雪君も捕まえておいたぞ」 そんなことを言いながら、車を走らせ始めた。 辿り着いた場所はこの間、隆雪と顔を出したスタジオと同じ建物。 だけどこの間は地下に降りた俺だが、 今日は親父と一緒に正面玄関を上がっていく。 「あらっ、兄さん。  それに託実くんも久しぶりね」 そうやって姿を迎えたのは、 親父の妹、旺希(おうき)叔母さん。 華京院家に伊舎堂の家から嫁いだ人。 「旺希、悪いが託実のベースを探してやってくれないか」 「えぇ、宜しくてよ。  兄さまは、どうされて?」 「俺は最上階のサロンで演奏でも聴きながら待ってるよ」  「なら終わり次第、声をかけますわ」 そう言うと俺だけを、 この人の元に置いて親父はすぐにエレベーターの方に歩いていった。 親父……俺、この旺希叔母さん苦手なの知ってるだろ?
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加