3.相棒探しと負けず嫌い

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「さっ、託実。  陸上一筋だった貴方が珍しいわね?  この間、地下のスタジオに宮向井君と来てたわね。  羚の演奏でも聴いたの?」 真っ直ぐに見据えるように伝えられた叔母さんの言葉は、 真実そのもので。 「あの羚って何者?  俺より年下なのに、なんであんなに演奏上手いわけ?」 「怜君の影響もあるんでしょうね」 「怜君?」 「えぇ、SHADEの佐喜嶋怜くん。  羚は、小さい時から怜君と一緒に音楽教室にもスタジオにも来てたのよ」 大きな建物の中には、地下のスタジオから始まって 楽譜フロアー、ピアノ、エレクトーン、DTM(デスクトップミュージック)コーナーなど いろんなジャンルにわけて、最上階まで音楽関係のものばかりを販売していた。 「さて、此処のフロアーにあるのが全部ベースよ。  託実、気になるものはある?」 六階フロアーにエレベーターから出た途端、 空間いっぱいに沢山並べられているのが全てべース? けど……叔母さん、ベースってどうやって選ぶんだよ。 俺、完全な初心者。 まだ楽器も触ったことないって。 「中山、私の甥っ子がベースを始めるみたいなの。  ベース選ぶの手伝ってあげて。  彼が中山。うちの店のベース教室の講師も任せてる一人よ」 叔母さんはそう言って、頼もしい助っ人と引き合わせてくれた。 「初めまして。中山と申します。    まずは、初心者の人にわかりやすく、  この冊子を見ながら説明させて頂きます」  中山さんが手渡した冊子には、いろんな形をしたベースが書かれていた。
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