4.練習と曲作り~裕先生の寄越した人~

2/12
前へ
/167ページ
次へ
託実が私の病室に毎日顔を出すことがなくなった。 宗成先生や、時折、オリジナル曲の打ち合わせに顔を出してくれる 隆雪君から、ベースを買って必死に練習してるからって言うことは聞いてる。 ちゃんと託実のことを理解してるつもりなのに、 どうして寂しいって思っちゃうんだろう。 人の優しさをもう一度取り戻すことが出来た私は、 凄く凄く寂しがり屋で、昔みたいに我慢できなくなってるのかもしれない。 最近、体の調子は良くて暫くお休みしてた、 1階でのサロンコンサートも、冴香先生のピアノのレッスンも 受けれるようになった。 初めて……病気なりに、いろいろと制限があっても 充実してるなーって思えた、この年の秋。 夏の名残が激しい9月が過ぎ、 少しずつ秋の気配が強くなってきた10月へと季節は変わっていった。 携帯を握りしめては、何度も託実の名前を電話帳から呼び出す。 だけど発信ボタンを押すことが出来ずに、。 電話を切る時間が過ぎた。 リアルは凄く充実してるのに、嬉しいのに 心だけは、夏に比べてすっぽりと空間が出来てしまったみたいで……。 その朝、裕先生からのメールが夜中に入ってたことを知った。 * 理佳ちゃん 元気してるかな? 明日、理佳ちゃんの病室に、 この間話したお客さんがいくと思うから待ってて。 裕 * 忙しいからなのか用件を告げるだけのメールだったけど、 託実と託実の関係者・隆雪君に美加さん。 それ以外の人が病室に来ることに対してちょっと緊張した。
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加