4.練習と曲作り~裕先生の寄越した人~

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「あらあらっ、理佳ちゃん。  無理して、体調を崩しては元も子もないのよ。  この夏休み、先生の甥っ子も心臓の手術したのよ。  甥は、理佳ちゃんみたいに重い心臓の病気ではなかったけど、  姉にとっては大変な試練の時間だったみたいね。  先生にも大切な一人息子がいる。  今は小学校三年生だけど、咲夜(しょうや)が……って考えたら、先生どうなるかわからなかった。  だから理佳ちゃん、ご両親と上手くいってないのも先生知ってるけど  出来るなら、理佳ちゃんのピアノを何時か、先生は理佳ちゃんの御両親に聴いてほしいって思うの。  出来れば、この曲を……先生と一緒に……ね」 そう言って冴子先生は、行かなきゃっと画面の向こう側のボタンを押したらしく 私のノーパソからは先生の顔はブラック画面になってしまった。 「理佳ちゃん、レッスンは終わったかしら?」 11時になって、放心状態の残ってる私に、かおりさんが迎えに現れる。 「あらっ、理佳ちゃんどうしたの?」 「今冴香先生が……この楽譜の曲を、先生と一緒に演奏して私の親に聴かせましょうって」 「まぁ、素敵ね。  理佳ちゃんが冴香先生と一緒に演奏するときは、私もお邪魔したいわ」 会話を進めながらも、私が病室に帰る準備は着々と進められていて そのまま車椅子に移動した私は、病室へと連れ戻された。 ベッドに入った後も、前に貰った冴香先生の演奏データーを必死に聴きこんでは 楽譜に印をつけていく。
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