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気が付けば昼食時間。
昼食の後も、ずっと演奏を聴きこんでは
指先は空中を動き続ける。
ここのトリルをもう少し、指をしっかり早く動かさなきゃ、滑りやすいなー。
なんて独り言ばかりが口をついて出る。
14時までの時間はあっという間で、
私は来客が来たことすら気が付けずに、イヤホンから聴こえ続ける音に指を無心に動かし続けてた。
ようやく耳から届く演奏が終わって、
めくりつづけた楽譜を最初に揃えて、もう一度再生させようとした時
ふと、私の肩を触れる存在に驚いて、顔を上げる。
「練習中のところごめんなさい。
約束の時間なんだけど、宜しくて?」
顔を上げた先には、声をかけた女の人と、髪の長い男の人が二人。
「あっ、すいません。
えっと……裕先生の紹介で来てくださったんですよね。
ごめんなさい」
慌ててイヤホンをはずして、ベッドの中で慌てていると
女性の後ろに居た、少し若い男の人がゆっくりと慌てる私の手を止めた。
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