4.練習と曲作り~裕先生の寄越した人~

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一斉にその女の人にお辞儀を始める従業員。 「ここは彼女の家が経営するお店なんです」 そう言って、車椅子を押しながらよっくりと教えてくれた。 「紺野さま、伊集院さま、ご無沙汰しております。    初めまして、満永さま。  どうぞ、本日はごゆるりと」 そう言って、店長と名札に書いてあったその人は私にも頭を下げた。 エレベーターで上に移動して通された場所は、 ホワイトボードと、ピアノが2台。 そしていろんな機材が詰まった部屋。 「さて、まずは裕兄様の課題からね。  高臣さま、紫音さま」 「その前に宝珠、ご挨拶をされては?」 「えぇ、そうね。  華京院宝珠(かきょういん ほうじゅ)ですわ。  今は悧羅学院内で、DTVT楽団を率いています。  こちらが、私のフィアンセ。  紺野高臣さま。そして、私たちの学院のOBであり私の師、伊集院紫音さまですわ」 そう言って自己紹介を始められた後は、 ホワイトボードや機材を使っての私の勉強時間。 PCに入っているソフトを触りながら、隆雪君から預かってた原曲は、姿を変えていく。 私が一人で編曲していた頃では、何処か物足りなかった場所もクリアされていく。 ピアノで編曲している時だけだと考えることもなかった、 ドラムの入ったイメージ、ベースの入ったイメージ、ギターの入ったイメージ。 足りなかった部分を補完しながら、勉強の時間は増えていった。
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