5.学院祭LIVE決定

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「家でも練習してきます。  次のレッスンまでには、ある程度こなせるようにしたいな」 「なら僕も楽しみにしてるよ。  サムピングの後は、プル。  サムピングの時に軽く握った状態の人差し指をこうやって使って  弦を引っ張り上げる。  サムピングを戻すときの回転力を使うんだ。  深く指をもぐらせすぎると、こんな風に引っかかってしまうから  自然に軽い動きで」 そう言って中山先生は、ベースのメロディフレーズから スラッピングのフレーズへと繋げていく。 サムピングでは、3弦と4弦。 プルは、1弦と2弦をよく使うのか、 2つの動きを組み合わせながら、中山先生の演奏は続いた。 そうやってその日の練習を終えた俺は、 一度、レッスンスタジオを出て次にレンタルで押さえている時間までの 30分間を軽く腹ごしらえするために出掛ける。 近所のコンビニで、パンとコーヒーを購入して 店前のベンチに座って食べ終えると、 携帯を見ながら、理佳の電話番号を表示させる。 アイツ、今頃何してるだろ。 アイツのところに顔出さなくなって、 もうすぐ1ヶ月になっちまうのか……。 そろそろ会いに行きたいと望む俺と、 アイツと対等に話す隆雪を見て、イラっとするのが嫌だから せめて隆雪と対等な程度には、楽器のことも音楽のことも叩き込んで それで堂々とアイツの横に立ちたいと言う、俺の我がままにも似たプライド。 指先で伸ばしかけた発信ボタンを どうにかこうにか抑え込んで、俺はベンチから立ち上がると スタジオの方へと歩いて戻った。 スタジオ前の玄関に車椅子に座って笑う、理佳を見つけた。 理佳の傍には、従姉妹の宝珠姉さんと昂燿校の紺野KING。 そして……もう一人は、学院の伝説のメンバーと言われてる 一綺兄さんの父親の時代に学院改革をした、有名ピアニスト伊集院紫音。
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