5.学院祭LIVE決定

5/9
前へ
/167ページ
次へ
裕兄さんかよ。 なんだよ、あの顔ぶれ。 夏休みの間、もっと近く感じてたこ理佳の存在が一気に 遠のいた気がして、苛立った。 俺は逃げるように、理佳たちの前を走って建物の中へと入ると カウンターに預けていた相棒を連れて、再度、レンタルすることが出来たスタジオへと 一人引き籠って、黙々とベースを奏で始めた。 なんだよっ。 素直になりたいと思いながら、なりきれない俺自身。 好きな奴の前では、 見栄もはりたいし、かっこいいところを見せたい。 アイツは年上なんだ。 もっと……もっと、アイツの傍に居るのに相応しい俺になりたい。 そうやって望み続ける俺の想いは、 からまわりに終わっているような気がしつつも それを認めることすら出来ず、ズルズルと彷徨い続けてた。 ふいに首を回しながら視線をドアの方に向けた時、 何時からそこに居たのか、SHADEの怜さんとガラス越しに視線があった。 彼に向かってお辞儀をすると暫くすると、ガチャリと重たいドアが開いて 怜さんが姿を見せた。 「こんばんは。  託実くん、練習は順調?」 「まだまだ足りないところは沢山あると思います。  隆雪と……」 アイツの隣には立つには…… こう続けようとした言葉も、理佳の名前の部分は声にすることすらできずに 心の中で続ける。 「隆雪と?」 「あぁ、隆雪にバンド誘われてるのに、  まだまだ出来る技量には程遠いなって話で」 そんな風に、サラリと本心を隠して会話を続ける。 「だけど中山先生は託実くんの上達は早いって聴いたけど?」 そう続けられた言葉に、中山先生に対して 『何勝手に話してんだよ』と言う見当違いな怒りが湧き上がる。 「今日、昂燿校の生徒総会メンバーが悧羅校に来てるんだ。  もうすぐ学院祭だろ。  その関係で俺も、昂燿を出ることが出来たから  此処に顔を出してる」 そう言った怜さん。
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加