5.学院祭LIVE決定

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でもそれってどういう意味だよ。 学院祭と、俺のベースは関係ないだろう。 そんなことを思いつつ、 何を考えているのかわからない怜さんと向き合う。 「託実くん、今、俺の前で演奏してくれるかな?」 そう言うと、怜さんは手にしていた自分の相棒をテーブルに置いて そのハードケースから、緋色の綺麗なギターを取り出した。 「さて、何でもいいよ。  託実くんの心のままに音を出して」 怜さんはそう言うと、俺が演奏を始めるのをじっと傍で待つ。 演奏って言っても、そうやって言えるほどのものはまだ出来なくて いつも通りの練習をする羽目になる。 まずは開放弦からのピッキング。 今までの練習の成果を復讐するように、 地道な基礎練習を続ける俺に、 怜さんは自分のギターの音色を重ねてきた。 ベースのどっしりとした音に絡むように重なる、 ギターの音色。 単純すぎる基本練習しか出来ていないのに、 同じように重なるギターに、体が芯から熱くなっていくのが感じられた。 やっぱり……俺はもっと、ベースをものにして この相棒を使いこなして、隆雪たちと理佳の曲を演奏したいって心から思った。 その日の練習を終えて、帰宅して泥沼の様にベッドに眠った翌日。 学校に登校して、いつもの様にデューティとの時間を過ごす。 「生徒総会よりお呼び出し致します。  亀城託実、並びに久禮智樹は至急パレスまでお越しください」 朝のティータイムに、放送での呼び出し。 途端になんかやらかしたか?っと不安になる。 「託実、心当たりでもある?  顔色悪いけど?」 デューティー、 だから今追い打ちかける言葉やめてください……。 生徒総会からの呼び出しなんて、 今までも一度もないんだ。 「心当たりがないなら、堂々と行けるだろう。  さぁ」 そう言うとデューティー智樹は、先にパレスと呼ばれる生徒総会専用の執務室の建物に 歩いていく。 「久禮智樹並びに亀城託実です。  仰せに従い、参りました。  お取次ぎを」 学院の中でも一番セキュリティーが厳しいその場所の警備室に声をかけると、 中から宝珠姉さんが姿を見せた。 げげっ……。 やな予感。
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