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こんな風に、隆雪君は病室を訪ねてきては
託実の忙しさを強調して、
その後には私の知らない学校生活を送る託実のことを教えてくれる。
10月の中旬になった頃、
ゆっくりと勉強しながら、冴香先生や裕先生、宝珠さんたちに相談しながら
作り上げた、隆雪君原曲でアレンジした三曲の編曲が何とか形になった。
例の如く、作り上げた途端に体調を崩して
寝込んでしまった私は、その楽譜を裕真さんたちに託して休養する羽目になる。
その一週間後、今度は一綺さんがUSBの中にデーターを入れて
病室を訪ねてきた。
まだ熱がすっきりとひかない怠さの残る体。
だけど持ってきてもらったデーターを聴きたくて、
ノーパソを起動させた。
そこには、私が預けた楽譜を元に
各、楽器ごとの伴奏が広がっていた。
画面に映る、託実のバンドメンバーの姿。
久しぶりに見た託実が、
私が初めてみるベースを肩からぶらさげた姿で
隆雪とふざけあってた、そんな映像がおさめられてた。
託実の姿を見ることが出来たのが、
改めてこんなにも嬉しく思うんだと……実感した。
10月下旬のある日、宗成先生が私服姿で私を訪ねてきた。
「理佳ちゃん、少し診察させてくれるかい?」
そう言って、真剣な表情になっていつもの日課を終えると
今度はベッドサイドの折りたたんでいた車椅子を開いた。
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