6.LIVEに向けて 

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「宗成伯父さま、理佳さん、いらっしゃい。  ゆっくりしていらして。  どうぞ、こちらの部屋に」 そう言って通されたのは、沢山のミキサーが並んだ空間。 そこに女の子が一人座って、 次から次へと何かの作業をしていく。 「いいわ。  Ansyalは暫く休憩でいいかしら?怜」 「あぁ、構わない。  宝珠、暁鈴、今度はSHADEの方を調整させて貰っていいか?」 「えぇ。  怜が疲れてないなら構わなくてよ」 そんな会話の後、ガラスのドアが内側からガチャリと開いて 中で今まで演奏していたメンバーがガラスの外に出てきた。 「デューティー紀天。  練習再開まで、向こうの部屋で私用をこなします。  練習開始になったら呼んでください」 そう言いながら、さっきまで歌ってた男の子は 何処かの部屋へと歩いていく。 「伊吹、わかったから。  その愛想のなさ、何とかしろって」 そう言って後を追いかけていくのは、 ドラムを叩いてた人。 その後に、託実と隆雪君が出てきた。 「親父、理佳……」 「ほらよ、託実。  隆雪君、疲れてるだろ。    差し入れだ」   そう言って宗成先生は、手にしてた紙袋を手渡す。 袋の中を覗き込んだ託実は、 サンドウィッチを掴み取ると、 すぐにナイロンを破って胃袋の中に収めていく。 そんな託実の姿が懐かしくて、 思わず、笑みが零れ落ちた。
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