7.学院祭準備期間

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少し走り気味になる、昂燿の廣瀬さんのドラム。 パワフルなんだけど、それを支えるベースの存在のプレッシャーがキツイ。 リズム隊の俺たち二人が崩れると、 せっかくすげぇいいように仕上がってる、怜さんのギターと隆雪のギターが 光らない。 そして……ボーカルをする、瑠璃垣って奴。 一度、メロディーに乗せて歌わせれば めちゃくちゃ上手いのに、それ以外の性格は最悪でコミュニケーション取りづらいのなんのって。 そんな噛みあいそうにない奴らが、 こうやってまとまって、一つのものを形にしようと思えるのは ムードメーカーの怜さんと、隆雪自身の本質。 練習を終えてスタジオを出た頃には、とっくに約束の二時間は過ぎていて 理佳は親父と共に病院へと戻ったみたいだった。 「お疲れ様です」 挨拶を済ませて、スタジオの建物を飛び出すと ベースを担ぎながら、アイツの電話番号を呼び出す。 「もしもし」 「こんな時間にごめん。  今、練習終わったんだ」 「うん、もう22時だよ。  そんなに練習してたの?」 「まぁ、学校じゃこんな時間までは無理だけどな。  今、練習させて貰ってるところ  怜さん、あぁ、緋色のギター持ってた人居ただろ。  あの人が、今回の仕掛け人なんだけど  怜さんのバンドが、あそこの事務所と契約してて……  んで、あの場所が専用スタジオ。  だから何時行っても、関係者は練習させて貰えるから」 「そうなんだ……」 そんな他愛のない会話をしながら、 俺は家までの道程を、アイツの声を聴きながら帰宅した。 これからは電話掛けれる時は、遅くなるけどするからって言うのと 今、俺が任されてる学校でのことなんか、 俺の身の周りのことを、アイツに話す。
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