8.学院祭当日 

2/10
前へ
/167ページ
次へ
ついに迎えた11月3日。 託実が教えてくれた、三日間の悧羅学院祭の初日。 いつもより早く目が覚めちゃった私は、 朝から、ドキドキしてる。 興奮して体調崩したら、それすら叶わなくってしまうのに ドキドキは止まってくれない。 いい子にして……私の心臓。 今日から三日間だけは……いい子で居て……。 朝の回診時に姿を見せたのは、宗成先生と 久しぶりに対面した裕先生だった。 「おはよう、理佳ちゃん。  どれ、今日のご機嫌はどうだ?」 ベッドを囲むカーテンを引いて、 朝の診察の後、ゆっくりと開かれる。 「裕くん、いいよ。  少し興奮気味だから、  発作が出始めると処置用の薬は預けておく。  準備が終わったら俺の部屋に寄ってくれ。  じゃ、理佳ちゃん。  楽しんでおいで」 そう言いながら、宗成先生は病室を出ていった。 その後、顔を覗かせたのは薫子先生と、姫龍さんの二人。 「さぁ、姫はこちらじゃ」 そう言うと、手にしていた箱をベッドにおいて、ゆっくりと開く。 質感の良い生地で誂えられた、ライラックの衣装。 タートルネックのシャツは薄い水色。 変わった形のジャンパスカートの裾はアンバランス。 巻きスカートのようにも見えるその衣装に添えられているのは、 上品な濃き紫であわせられた、パフスリーブのボレロ。 「理佳ちゃん、着替え終わったら呼ぶといいよ。  先に、宗成叔父さんのところに顔を出してくるよ」 裕先生はそう言って病室を出た。
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加