8.学院祭当日 

3/10
前へ
/167ページ
次へ
「これは私たちからのプレゼントよ。  今日から三日間は、理佳ちゃんも悧羅学院の外部編入生。  生徒には制服は必要でしょう?」 そう言うと先生たちは、私が着替えやすいように次々と準備を始めた。 促されるままに着替えを済ませて、車椅子に移動して鏡の前に姿を映す。 いつもと違う私が、その鏡の中に居て、不思議な感覚が包み込む。 その後も、姫龍さんが髪型をすぐにセットしてくれて、目の前に居る私は瞬く間に 血色のいい、何時もとは別人になってく。 「さぁ出来た。  理佳ちゃん、楽しんでらっしゃい」 そう言って二人に見送られた私は、相変わらず移動は車椅子のままだったけど 迎えに来てくれた裕先生に連れられて、病院の建物を後にした。 車で移動した私たちは、生徒たちが入ってる門とは違う、もう一つの門の方へと車は向かっていく。 「伊舎堂裕です」 門の前で、警備員に名前を告げてカードを翳すと 大きな門がゆっくりと動き始めた。 その間を抜けるように車は、門の中へと入っていく。 少しずつ紅葉が始まりだしたただっ広い庭園を抜けて静かに止まった車の前にある建物は、 何処か外国の建物みたいで。 「お待ちしておりました。伊舎堂最高総。  理事会の皆さま、並びに歴代の総会メンバーもお集まりになられています」 そう言って恭しく膝をついて、後部座席の前で姿勢を取る、菫色の和服を着た人たち。 「光輝(こうき)、一綺、由毅(なおき)、竣佑有難う。  理佳ちゃん、行きましょうか?」 そう言って車を降りて建物の中に入っていく裕先生は、 全く私が知らない先生で……ただキョロキョロしたまま、 立派な迎賓館と記された建物へと吸い込まれていく。 スーツ姿の人たちの中に、同じような菫色の和服に身を包んだ人たち。 キョロキョロと視界を映すと、その中には和服姿の宝珠さんや、同じく和服姿の高臣さんの姿も確認することが出来た。 託実は……。 託実を見つけたくて、目を凝らすもそこに託実の姿は見えなくて、俯いた時 久しぶりに再会した、伊集院さんが近づいてくる。
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加