8.学院祭当日 

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次々と膝を折って挨拶をしていく、この学校の独特の習慣に圧倒されながら 私たちは、エレベーターに乗り込んで三階へと到着した。 「理佳、この橋が悧羅校の男子校舎と女子校舎を繋ぐ天の川。  この学校ってさ、共学をうたってる割に、校舎は別なんだぜ。  酷い話だろ」 そんな話もしながら、初めて見る学校の中を託実は面白く説明してくれた。 「ねぇ、さっきから……どうして、いろんな生徒さんたちが不思議な挨拶をするの?  裕先生は偉い人?」 純粋な疑問。 「理佳ちゃん、そんなこと気にしなくていいよ。  私は偉くもなんともない。  ただつい最近まで、この学院内の生徒総会と言われる組織に選ばれていただけです。 この学院の生徒にとっては、生徒総会と言う役職は特別の意味を持つのです。  ただそれだけですよ」 そんな風に裕先生は話すけど、託実はイライラしてるのかちょっと車椅子を押す速度が早くなってる? 違うの? やっぱり……偉いの? 「さてっと到着」 教室の一角に作られた幾つも作られた茶室っぽい入口。 「おーい、特待頼むよー」 そう言いながら託実は、車椅子を御茶室の小さな入口の前に横付けした。 「少しだけ中に移動。  理佳、入って」 促されるように小さなドアを潜り抜けて、畳の部屋へと入ると そこには綺麗な着物姿に身を包んだ人たちが、静かに座って待機してた。 私の後に続くように、託実も裕先生も入室する。 三人が揃った時点で静かに点てられていく抹茶。 お茶の作法なんて殆どしらないまま、放り込まれたその場所。 チラリと託実たちの仕草を見ながら、 私も見様見真似でお茶菓子とお茶を頂く。
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