第二楽章 「祈りの夏 煌めく季節」 1.隆雪と怜さん 

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片目を隠すように、長い前髪で覆われた少年。 「託実くん、申し訳ない。  愛想悪くて」 「気にしてないんで」 「あっ、後……今日連れてきて二人を紹介するよ。  廣瀬紀天(ひろせあきたか)と瑠璃垣伊吹(るりがき いぶき)。  紀天は、俺の後輩がドラムで面倒見てる。  伊吹は、紀天のジュニア。  彼ら二人のグランは、裕最高総だったから、気になるなら聞いてみるといいよ」 そうやって紹介されると、差し出されるままに順番に握手をした。 「じゃ、スタジオ入るぞ」 怜さんの掛け声に、一斉にスタジオに入っていくメンバー。  「一発目、HEAVEN」 琢也さんの一言で、スティックが打ち鳴らされて一気にスタジオ内が爆音に包まれていく。 耳が痛くなるような空間。 だけど、それだけじゃなくて何処か血が騒ぎ始めるような熱いものが込み上げてくる。 あっという間に演奏が終わった頃は、放心状態でただキーンと耳鳴りが聴こえる中で 立ち尽くしていた。 一曲が終わっても、次から次へとLIVEさながらに曲は続いていく。 黙々とベースを磨いてた、あのガキは相変わらず黙々とベースと向き合ってた。 何曲か演奏を聴いているうちに、俺の中で、歌・ギター・ベース・ドラムとバラバラに音が聴こえるようになる。 そんな感覚が何故か不思議で。 「託実くん?  どうかした?」 「託実?」 隆雪たちが呼ぶ声が聞こえて、俺は慌てて相変わらずの耳鳴りを気にしながらも 顔を上げる。 「いえっ、楽しませて貰ってます」 辛うじて答えられるのは、それだけ。 「それじゃ、次。  隆雪・紀天・伊吹。  もう一人のギターは俺が入るし、ベースはとりあえず羚に」 そう言うと、SHADEのメインメンバーは壁際によって 今度は見守る側へと変わる。 「んじゃ、学院祭用の一曲目行ってみようか」 怜さんが言うと、 今度は紀天とか紹介された人がスティックを打ち鳴らして演奏を始める。 粗削りだけど、音の重たい大砲のようになドラム。 そのドラムを支えるように、 どっしりとリズムをキープさせるベース。 その二つのリズム隊に、絡み合う様に奏でられる二つのギターの音色。
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