8.学院祭当日 

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「有難う、託実」 そっと胸元で抱きしめるポストカード。 再び動き出して、ハーモニーホールに到着すると 託実は、運営委員会の仕事に戻るために持ち場へと帰っていった。 私は裕先生と一緒に、ハーモニーホールの用意された VIP ROOMっぽいボックス席に連れていかれる。 ステージまでは少し距離があるけど、それで映し出される映像は目の前に見えるのと同じで……。 「本当は近くで見せてあげたかったんだけど、  理佳ちゃんも演奏の準備があるから、今回はここ。  後で、宝珠たちもこの部屋に来るようになってる。  そこにあるピアノも触って練習してもかまわないから。  この部屋の音は外部には漏れない。  この部屋の外の音も、スピーカーを通してでしか入ってこないから。、  適度に休憩しながら、芸能祭も楽しむといいよ」 少しの間、休憩しながら舞台を見つめていたけど、 自分の練習もやろうと思って、ピアノの方に移動する。 裕先生と一緒に演奏するのは、 バッヘルベルのカノン。 私一人で演奏するのは、 ショパンの夜想曲を即興アレンジでメドレーにすること。 そして最後の一曲は、 急きょ、皆で演奏することになったオリジナル曲。 練習を始めると、部屋に集まってくれた皆と打ち合わせをして その後は、ステージの方へと車椅子で移動していく。     演奏用にも用意して貰ってたドレスに着替えて、 託実に車椅子を押して貰いながら、ステージに向かう。 車椅子からゆっくりとピアノの椅子の傍で立ち上がって、静かにお辞儀をした後 椅子に座って、高さを調節。 深呼吸をして、そっと鍵盤の上に両手を置いた。 ショパンの夜想曲メドレーをオリジナル即興で一気に届けた後、 ゆっくりと合流してくる裕先生。 裕先生と一緒に演奏するのはカノン。
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